小規模事業者が新しい顧客を獲得したり、商品・サービスの販売方法を見直したりする際に活用を検討できる補助金の一つが、小規模事業者持続化補助金です。
小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>は、小規模事業者等が自ら経営計画を策定し、その計画に基づいて行う販路開拓等の取組や、販路開拓とあわせて行う業務効率化(生産性向上)の取組を支援する制度です。
この記事では、2026年7月21日時点の第20回公募 公募要領をもとに、制度内容、補助金額、対象となる事業者、対象経費、申請方法、採択審査のポイントを分かりやすく解説します。
※詳細は必ず最新の公募要領をご確認ください。
小規模事業者持続化補助金とは
小規模事業者持続化補助金は、物価高騰、賃上げ、インボイス制度の導入などの制度変更等に対応する小規模事業者等の販路開拓を支援し、生産性向上と持続的発展を図ることを目的とした補助金です。
対象となるのは、自ら策定した経営計画に基づく、
- 新たな市場への参入に向けた売り方の工夫
- 新たな顧客層の獲得に向けた商品・サービスの改良や開発
- 販路開拓とあわせて行う業務効率化
などの取組です。
単に設備を購入したり、ホームページを作成したりするための補助金ではなく、経営計画に基づく販路開拓等の取組であることが重要です。
いくら補助されるのか

一般型・通常枠の基本的な補助内容は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助上限額 | 50万円 |
| 補助率 | 2/3 |
| インボイス特例 | 補助上限を50万円上乗せ |
| 賃金引上げ特例 | 補助上限を150万円上乗せ |
| 両方の特例を利用 | 補助上限を200万円上乗せ |
| 賃金引上げ特例のうち赤字事業者 | 補助率3/4 |
通常枠では補助上限50万円ですが、一定の要件を満たす場合には特例による上乗せを受けることができます。
例えば、インボイス特例と賃金引上げ特例の両方の要件を満たした場合、通常枠50万円に200万円が上乗せされ、補助上限は最大250万円となります。
ただし、特例を希望した場合には、補助事業終了時点で所定の要件を満たす必要があります。要件を満たさない場合、上乗せ部分だけではなく、補助金全体が交付されない場合があります。
誰が利用できるのか
補助対象となる小規模事業者は、業種ごとに「常時使用する従業員数」で判断されます。
| 業種 | 常時使用する従業員数 |
|---|---|
| 商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く) | 5人以下 |
| サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
| 製造業その他 | 20人以下 |
対象となり得る事業者には、
- 株式会社などの会社
- 個人事業主
- 士業法人
- 一定の要件を満たす特定非営利活動法人
などがあります。
一方、医師、歯科医師、助産師、医療法人、一般社団法人、一般財団法人、学校法人、宗教法人、社会福祉法人などは補助対象になりません。
また、法人の場合は、資本金または出資金が5億円以上の法人に直接または間接に100%株式を保有されていないこと、直近過去3年分の課税所得の年平均額が15億円を超えていないことなどの要件もあります。
どのような事業が対象になるのか
補助対象となるためには、公募要領に定められた要件をすべて満たす必要があります。
主なポイントは次の4つです。

1.経営計画に基づく販路開拓等であること
策定した「経営計画」に基づいて実施する販路開拓等の取組、または販路開拓とあわせて行う業務効率化の取組である必要があります。
2.商工会・商工会議所の支援を受けること
地域の商工会または商工会議所から事業支援計画書(様式4)の発行を受け、補助事業実施時にも助言等の支援を受けながら取り組む必要があります。
3.補助事業実施期間内に事業を終了すること
第20回公募では、交付決定日から2028年3月31日までに補助事業を終了する必要があります。
4.売上高・売上総利益の増加が見込まれること
公募要領では、事業効果報告時の売上高・売上総利益が、補助事業終了時と比較して増加することが見込まれる事業であることが求められています。
申請時には、市場や顧客ニーズの分析、営業方針、新規取引や値上げの見込みなどの根拠とともに、売上高・売上総利益の増加という定量的な成果を補助事業計画に記載する必要があります。
何に使えるのか

補助対象経費は、次の8種類です。
- 機械装置等費
- 広報費
- ウェブサイト関連費
- 展示会等出展費
- 旅費
- 新商品開発費
- 借料
- 委託・外注費
具体的には、販路開拓に必要な機械設備、新商品のチラシや広告、ホームページ・ECサイトの制作、展示会出展、新商品の試作、店舗改装などが対象となる場合があります。
例えば委託・外注費では、店舗改装・バリアフリー化工事や利用客向けトイレの改装工事などが対象経費の例として挙げられています。
ホームページや広告にも利用できる
持続化補助金では、販路開拓のための広告やウェブサイト制作も対象となります。
広報費では、
- チラシ・カタログ
- 新聞・雑誌広告
- 看板
- インターネット広告
- バナー広告
- SNS広告
- プレスリリース
などが対象となり得ます。
ウェブサイト関連費では、
- ホームページ制作・更新
- ECサイト
- システム開発
- 顧客管理システム
- アプリケーション開発
- 販路開拓等のためのソフトウェア
- 効果や作業内容が明確なSEO対策
などが対象となります。
ただし、広報費とウェブサイト関連費は、それぞれ補助金交付申請額の上限が30万円(税込)であり、これらの経費だけで申請することはできません。必ず他の経費とあわせて申請する必要があります。
対象にならない経費にも注意
販路開拓に関係しているように見えても、すべての費用が補助対象になるわけではありません。
例えば、
- パソコン
- タブレット
- 事務用プリンター
- スマートフォン等の汎用性の高い機器
- 自動車
- 通常の商品仕入
- 老朽化した設備の単なる買替え
- 名刺
- 文房具などの消耗品
- 通信費
- 駐車場代
- 税理士等への通常の税務申告費用
- セミナー・研修等の参加費
- 人件費
- 通常のコンサルティング・アドバイス費用
などは原則として補助対象外です。
また、交付決定前に発注・契約・購入・支払いを行った経費は原則として補助対象になりません。
第20回公募のスケジュール
第20回公募の主なスケジュールは次のとおりです。
| 項目 | 日程 |
|---|---|
| 公募要領公開 | 2026年5月27日 |
| 申請受付開始 | 2026年11月5日 |
| 事業支援計画書(様式4)発行受付締切 | 2026年12月4日 |
| 申請受付締切 | 2026年12月15日17時 |
| 採択発表 | 2027年3月頃予定 |
| 補助事業実施期限 | 2028年3月31日 |
特に注意したいのが、事業支援計画書(様式4)の受付締切が申請締切より早いことです。
公募要領では、2026年12月4日の受付締切以降は、いかなる理由があっても事業支援計画書の発行依頼はできないとされています。
申請にはGビズIDプライムが必要
申請は電子申請システムのみで受け付けられ、郵送での申請はできません。
また、申請にはGビズIDプライムのアカウントが必要です。
基本的な流れは、
GビズIDプライム取得
↓
経営計画・補助事業計画の策定
↓
商工会・商工会議所へ事業支援計画書(様式4)の発行依頼
↓
電子申請
↓
採択
↓
見積書等の提出
↓
交付決定
↓
補助事業実施
↓
実績報告
↓
補助金額確定
↓
補助金請求・交付
となります。
なお、補助金は先にもらえるものではありません。公募要領では、補助事業遂行時には自己負担が必要で、補助金は後払いと明記されています。
採択されるために確認しておきたい審査のポイント

小規模事業者持続化補助金には審査があり、申請すれば必ず採択されるものではありません。
採択審査は提出資料による書面審査で行われ、提案内容についてのヒアリングは実施されません。
そのため、ここでは一般的な「採択ノウハウ」ではなく、公募要領に明記されている計画審査の項目を確認しておきましょう。
1.自社の経営状況を適切に分析する
審査では、
- 自社の経営状況
- 自社の商品・サービス
- 自社の強み
- 自社の弱み
を適切に把握しているかが確認されます。
2.市場や顧客ニーズを踏まえた計画にする
経営方針や今後の計画について、
- 自社の強み・弱みを踏まえているか
- 対象市場や商圏を把握しているか
- 顧客ニーズを捉えているか
- 売上高・売上総利益の増加を目指しているか
が審査されます。
3.補助事業を具体的に説明する
補助事業については、
- 客観的事実に基づいているか
- 目標が設定されているか
- 実現可能性が高いか
- 販路開拓につながるか
- 売上高・売上総利益の増加につながるか
- 新たな価値を生み出す商品・サービス・提供方法となっているか
- デジタル技術を有効に活用しているか
などが審査されます。
4.必要経費を正確に積算する
補助事業に計上した経費についても、
- 補助事業の実施に本当に必要か
- 金額の積算が正確か
- 内訳が明確か
が審査されます。
したがって、申請書を作成する際には、単に「設備を購入したい」「ホームページを作りたい」と記載するのではなく、自社の経営状況、市場・顧客ニーズ、実施する取組、売上高・売上総利益の増加までが一貫した計画になっているかを、公募要領の審査項目に沿って確認することが重要です。
加点制度も設けられている
第20回公募では、通常の計画審査に加えて政策的な観点から加点審査が行われます。
加点は、「重点政策加点」と「政策加点」からそれぞれ1種類、合計2種類まで選択できます。
重点政策加点には、
- 赤字賃上げ加点
- 事業環境変化加点
- 東日本大震災加点
- くるみん・えるぼし加点
- 健康経営優良法人加点
などが設けられています。
それぞれ適用要件が定められているため、自社が対象となる加点がある場合には、公募要領を確認したうえで申請します。
事業計画は事業者自身が検討する必要がある
第20回公募で特に注意したいのが、経営計画・事業計画の作成についてです。
公募要領では、この補助金は小規模事業者が自ら自社の経営を見つめ直し、経営計画を策定したうえで行う販路開拓を支援するものとされています。
事業者自身が検討しているような記載が見られない場合や、自ら検討していなかったことが判明した場合には、評価にかかわらず不採択または交付決定取消となる場合があります。
第三者から申請支援を受ける場合についても、その支援者や支援金額等を申告する必要があります。
まとめ
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が自ら経営計画を策定し、その計画に基づいて行う販路開拓等を支援する補助金です。
通常枠の補助上限は50万円、補助率は2/3ですが、インボイス特例や賃金引上げ特例の要件を満たせば、補助上限が引き上げられます。
一方で、
「何を購入するか」だけではなく、「自社の経営課題を踏まえて、誰に何をどのように販売し、その結果として売上高・売上総利益をどのように増やすのか」
まで計画する必要があります。
採択審査でも、自社分析、市場・顧客ニーズ、計画の具体性・実現可能性、売上高・売上総利益の増加、経費の適切性などが審査項目として明記されています。
また、第20回公募では申請締切が2026年12月15日17時であるのに対し、商工会・商工会議所への事業支援計画書(様式4)の発行依頼は2026年12月4日が締切となっています。
申請を検討している事業者は、余裕を持って経営計画・補助事業計画の作成を進める必要があります。
詳細は必ず最新の公募要領をご確認ください。
