省エネ・非化石転換補助金は、士業・補助金コンサルタントにとって設備投資案件を発掘しやすい補助制度の一つです。
今回扱う「省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)」3次公募では、
- (Ⅲ)設備単位型[従来枠]
- (Ⅲ)GX設備単位型[メーカー強化枠]
- (Ⅲ)GX設備単位型[トップ性能枠]
- (Ⅱ)電化・脱炭素燃転型
- (Ⅳ)エネルギー需要最適化型
という複数の事業区分が設けられています。
支援実務では、単に「省エネ設備を導入しますか」と聞くのではなく、
既存設備 → 更新予定 → 導入設備 → 省エネ効果 → 適用する事業区分
という順番で案件を整理することが重要です。
まず3次公募の基本情報を押さえる
公募期間は、
2026年8月20日~9月28日
です。
交付決定は2026年11月下旬予定です。
単年度事業では、2027年1月31日までに事業を完了する必要があります。
また、申請書類は2026年9月28日17時必着です。
ポータル入力だけでは申請完了になりません。
支援対象となりやすい顧客をどう探すか

設備単位型では、設備の更新予定を持つ企業が入口になります。
特に確認しやすいのが次の設備です。
- 高効率空調
- 産業ヒートポンプ
- 業務用給湯器
- 高性能ボイラ
- 高効率コージェネレーション
- 低炭素工業炉
- 変圧器
- 冷凍冷蔵設備
- 産業用モータ
- 制御機能付きLED照明
- 工作機械
- プラスチック加工機械
- プレス機械
- 印刷機械
- ダイカストマシン
これらは設備単位型の指定設備として示されています。
したがって顧客へのヒアリングでは、
「今年、古くなった設備を交換する予定はありませんか」
「空調・ボイラ・冷凍冷蔵設備などの更新予定はありませんか」
「工場の生産設備で老朽化しているものはありませんか」
といった質問から案件を発掘できます。
初回相談では「新設備」より先に「既存設備」を確認する

省エネ補助金の支援では、新しく購入する設備だけを確認してはいけません。
従来枠では原則として既存設備から指定設備への更新が対象になります。
そのため、
- 現在使用している設備
- メーカー
- 型式
- 台数
- 使用年数
- 稼働時間
- 使用エネルギー
- 更新理由
- 新しく導入予定の設備
を確認します。
さらに、従来枠では更新前後で使用用途が同じであること、中古品でないこと、兼用設備・将来用設備・予備設備ではないことなども条件として示されています。
次にどの事業区分を使うか判定する

設備単位型では、導入する設備や事業内容によって申請区分が変わります。
通常の高効率設備への更新
→ (Ⅲ)設備単位型[従来枠]
GX要件を満たしたメーカーの指定設備へ更新
→ (Ⅲ)GX設備単位型[メーカー強化枠]
特に高い省エネ性能を持つ設備
→ (Ⅲ)GX設備単位型[トップ性能枠]
化石燃料から電気や低炭素燃料へ転換
→ (Ⅱ)電化・脱炭素燃転型
EMSを導入してエネルギー管理を高度化
→ (Ⅳ)エネルギー需要最適化型
という整理ができます。
従来枠で最初に確認する数値
従来枠では、省エネ要件として次のいずれかを満たす必要があります。
省エネ率:10%以上
省エネ量:1kl以上
経費当たり省エネ量:1kl/千万円以上
です。
支援者としては、設備業者から単に見積書をもらうだけではなく、
既存設備と新設備の性能比較
ができる資料を早い段階で依頼しておく必要があります。
設備業者から確認したい資料
案件発掘後は設備業者との連携が重要です。
最低限、
- 既存設備の型式・仕様
- 新設備の型式・仕様
- 新設備がSIIの指定設備に該当するか
- 設備価格
- 省エネ性能
- エネルギー消費量
- 設置スケジュール
などを確認します。
特に対象設備については、SIIが定める基準を満たす必要があります。
したがって、一般的に「省エネ型」と呼ばれる設備であるだけでは判断できません。
補助率から逆算して制度を提案しない
各事業区分の補助率は次のように異なります。
| 事業区分 | 中小企業者等の補助率 |
|---|---|
| 設備単位型[従来枠] | 1/3以内 |
| GX設備単位型[メーカー強化枠] | 1/3以内 |
| GX設備単位型[トップ性能枠・更新] | 1/2以内 |
| GX設備単位型[トップ性能枠・新設] | 1/5以内 |
| 電化・脱炭素燃転型[更新・改造] | 1/2以内 |
| 電化・脱炭素燃転型[新設] | 1/5以内 |
| エネルギー需要最適化型 | 1/2以内 |
補助率は重要ですが、「1/2補助になるからトップ性能枠」という選び方ではありません。
設備・事業内容が各事業区分の要件を満たすかが先です。
補助上限も事業区分で大きく違う
主な補助上限は、
- 従来枠:1億円
- GX設備単位型:3億円
- 電化・脱炭素燃転型:3億円
- 電化の場合:5億円
- エネルギー需要最適化型:1億円
です。
下限はいずれも基本的に30万円となっています。
電化・燃料転換案件は別の視点で探す
顧客が、
「重油を使っている設備を電気式へ変更したい」
「ガス設備をヒートポンプへ変更したい」
「低炭素な燃料へ転換したい」
といった計画を持っている場合は、電化・脱炭素燃転型を検討します。
対象設備として、
- 産業ヒートポンプ
- 業務用ヒートポンプ給湯器
- 高性能ボイラ
- 高効率コージェネレーション
- 低炭素工業炉
などがあります。
更新・改造の場合の中小企業者等の補助率は1/2以内です。
設備費に加え、一定の付帯設備や工事費も対象となります。
ただし工事費は中小企業者等に限られます。
水素対応案件も確認する
今回の公募では、水素対応設備についても対象が拡大されています。
- 水素対応設備の導入
- 水素対応設備の新設
- 既存設備を水素燃焼可能に改造
する事業が支援対象とされています。
水素対応設備については、10%以上の混焼率で実稼働させることが求められています。
EMS案件は設備更新とは異なるヒアリングが必要
エネルギー需要最適化型では、設備そのものの更新だけでなく、エネルギー管理の仕組みを確認します。
ヒアリングでは、
- 現在エネルギー使用量をどのように把握しているか
- 設備別・工程別のエネルギー使用量を測定できているか
- EMSを導入済みか
- エネルギー管理担当者はいるか
- 運用改善をどのように行う予定か
などを確認します。
SII登録EMSを使い、エネルギー使用量の把握、表示、分析、運用改善を行うことが求められています。
AI活用型EMSも提案候補になる
高度型EMSについてはAIを活用した仕組みも示されています。
例えば、
- AIが制御データと実際の稼働状況を学習
- 設備設定を自動最適化
- 収集データから最適稼働を算出
- 複数設備のエネルギー使用を最適化
するシステムなどです。
設備更新案件だけでなく、エネルギー管理高度化案件も顧客提案の対象になります。
補助対象経費の確認は早めに行う
設備単位型では、事業区分により対象経費がかなり異なります。
例えばGX設備単位型[メーカー強化枠]では、原則として設備費のみです。
対象外となる代表的なものとして、
- 設計費
- 運搬費
- 既存設備撤去費
- 廃棄費
- 据付費
- 工事費
- 配線・配管
- 消費税
などがあります。
その一方、電化・脱炭素燃転型では一定の工事費も対象になります。
そのため、支援時には見積書を、
設備本体・工事・付帯設備・撤去・運搬等
に分けて確認することが重要です。
3者見積の準備を早く始める
補助対象経費については、原則3者以上による価格競争等が求められるものがあります。
GX設備単位型[メーカー強化枠]では、3者以上による価格競争等を実施した結果の最低価格を補助対象額の上限とするとされています。
申請期限直前に見積取得を始めると間に合わない可能性があります。
案件相談を受けたら、早い段階で設備業者へ必要な見積条件を説明しておく必要があります。
交付決定前の発注を必ず止める
支援者が最初に顧客へ伝えるべき事項の一つです。
交付決定前の発注は補助対象になりません。
公募要領でも、SIIから交付決定通知を受ける前に発注等を完了した事業は補助対象外と明記されています。
3次公募の交付決定は2026年11月下旬予定です。
顧客が設備業者と既に契約を進めていないか、初回ヒアリング時に必ず確認します。
申請単位にも注意する
原則として申請はエネルギー管理を一体で行う事業所単位です。
省エネ法の定期報告対象企業の場合は定期報告書上の事業所単位、それ以外は電気・ガス・油等の契約を行っている事業所単位が基本です。
設備の所有者と使用者が異なる場合などは共同申請となります。
したがって初回相談では、
- 設備を設置する事業所
- 設備所有者
- 設備使用者
- 電力・ガス等の契約者
を確認しておく必要があります。
支援実務での基本フロー

相談を受けた場合は、次の順番で確認すると整理しやすくなります。
① 更新予定設備を確認
↓
② 現在の設備の型式・性能を確認
↓
③ 導入予定設備を確認
↓
④ SII指定設備か確認
↓
⑤ 従来枠・GX枠・電化燃転型等を判定
↓
⑥ 省エネ効果を確認
↓
⑦ 補助対象経費を区分
↓
⑧ 3者見積等を準備
↓
⑨ 事業所・設備所有関係を確認
↓
⑩ 申請書類を作成
という流れになります。
3次公募ではスケジュール管理が特に重要
3次公募は、
公募締切:2026年9月28日
交付決定:2026年11月下旬予定
単年度事業完了:2027年1月31日まで
です。
交付決定後から事業完了までの期間が長くないため、設備納期を早い段階で確認する必要があります。
申請できても、期限内に設備納入・検収・支払いまで完了できなければ計画どおり事業を遂行できません。
まとめ
省エネ・非化石転換補助金の申請支援では、
「省エネ設備を導入したい企業を探す」
だけでは十分ではありません。
支援実務では、
既存設備 → 導入設備 → 指定設備該当性 → 省エネ効果 → 事業区分 → 対象経費 → 見積 → スケジュール
までを一連で確認する必要があります。
特に最初の相談段階では、
- 既存設備の型式
- 更新予定設備
- 更新時期
- 設備価格
- エネルギー種類
- 設置事業所
- 発注の有無
を確認することが重要です。
また、設備業者が持っている仕様・省エネ性能の情報が申請の重要な材料となるため、設備業者との連携も欠かせません。
「補助金ありき」で設備を探すのではなく、顧客がもともと予定している設備更新案件から対象可能性を確認していくことが、実務上取り組みやすい支援方法です。
なお、本記事は「令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)3次公募」の公募要領のみを根拠として作成しています。
実際の申請支援では、必ず最新の公募要領及びSIIが公表する指定設備等を確認してください。
