「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」は、中小企業等による新製品・新サービスの開発、新市場への進出、海外市場開拓などを支援する補助金で、以前運用されていたものづくり補助金の後継の補助金と位置づけられている補助金制度です。
※注※本記事は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回・1.1版)」をもとに作成しています。
公募要領は必要に応じて改訂される場合があります。詳細は必ず最新の公募要領をご確認ください。
制度には、
- 革新的新製品・サービス枠
- 新事業進出枠
- グローバル枠
の3つがあります。
この記事では、第1回公募要領に基づき、制度の内容をできるだけ簡単に説明します。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは
この補助金は、中小企業等が行う、
- 技術的革新性のある製品・サービスの開発
- 既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出
- 海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制の強化
を後押しする制度です。
これらの取組を通じて、企業規模の拡大や付加価値向上、生産性向上を図り、賃上げにつなげていくことを目的としています。
制度は、取り組む事業の内容によって3つの枠に分かれています。

1.革新的新製品・サービス枠
革新的な新製品・新サービスの開発を支援する枠です。
公募要領では、「顧客等に新たな価値を提供することを目的に、自社の技術力等を活かして新製品・新サービスを開発すること」とされています。
単に機械やシステムを導入するだけで、新製品・新サービスの開発を伴わない事業は対象になりません。
また、既存製品・サービスの生産プロセスを改善・向上するだけの事業も対象外です。
補助上限額
| 従業員数 | 補助上限額 |
|---|---|
| 1~5人 | 750万円 |
| 6~20人 | 1,000万円 |
| 21~50人 | 1,500万円 |
| 51人以上 | 2,500万円 |
補助下限額は100万円です。
賃上げ特例を利用する場合は、補助上限額がそれぞれ850万円、1,250万円、2,500万円、3,500万円に引き上げられます。
補助率
中小企業者は原則 1/2 です。
小規模企業・小規模事業者、再生事業者は 2/3 です。
また、中小企業者についても地域別最低賃金引上げ特例の対象となる場合は、補助率が2/3となります。
2.新事業進出枠
既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援する枠です。
対象となるためには、
- 新たに製造・提供する製品、商品、サービスが、その企業にとって新規性を持っていること
- その製品・サービスが属する市場が、その企業にとって新しい市場であること
が必要です。
ここでいう「新規性」は、日本初・世界初という意味ではありません。
その企業にとって新しい製品・サービスであることが基準となります。
また「新たな市場」とは、既存事業では対象としていなかったニーズや属性を持つ顧客層を対象とする市場とされています。
一方、
- 既存製品の製造量・提供量を増やすだけ
- 過去に製造していた製品を再び製造する
- 単に既存製品の製造方法を変更する
- 既存製品と対象市場が同じ
- 単に商圏を変える
といった事業は、新事業進出枠には該当しません。
補助上限額
| 従業員数 | 補助上限額 |
|---|---|
| 1~20人 | 2,500万円 |
| 21~50人 | 4,000万円 |
| 51~100人 | 5,500万円 |
| 101人以上 | 7,000万円 |
補助下限額は750万円です。
賃上げ特例を利用する場合は、それぞれ3,000万円、5,000万円、7,000万円、9,000万円まで引き上げられます。
補助率
中小企業者、小規模企業・小規模事業者、再生事業者を含め、原則 1/2 です。
地域別最低賃金引上げ特例の対象となる場合は 2/3 となります。
3.グローバル枠
海外市場開拓(輸出)に向けて、国内の輸出体制を強化する取組を支援する枠です。
公募要領では、
- 自社の製品等を活用して自発的に新たな海外販路を開拓すること
- そのために必要となる国内製造等拠点を強化すること
- 製品等が属する市場が、その企業にとって新しい海外市場であること
などが求められています。
取引先主導の事業は、自発的な取組とは認められず補助対象外です。
補助上限額
| 従業員数 | 補助上限額 |
|---|---|
| 1~20人 | 2,500万円 |
| 21~50人 | 4,000万円 |
| 51~100人 | 5,500万円 |
| 101人以上 | 7,000万円 |
補助下限額は750万円です。
賃上げ特例を利用する場合は、最大9,000万円まで引き上げられます。
補助率
補助率は 2/3 です。
補助対象になる事業者
補助対象者は、日本国内に本社と補助事業実施場所を持つ事業者で、公募要領に定められた要件を満たす必要があります。
対象者として、
- 中小企業者
- 小規模企業者・小規模事業者
- 特定事業者の一部
- 特定非営利活動法人
- 農事組合法人
- 対象リース会社
などが定められています。
ただし、これらに該当していても、公募要領に定める「補助対象外となる事業者」に該当する場合は対象になりません。
何に使えるのか

補助対象となる経費は、申請する枠によって異なります。
主なものとして、
- 機械装置・システム構築費
- 建物費
- 運搬費
- 技術導入費
- 知的財産権等関連経費
- 外注費
- 専門家経費
- クラウドサービス利用費
- 原材料費
- 広告宣伝・販売促進費
などがあります。
グローバル枠では、これらに加えて、
- 海外旅費
- 通訳・翻訳費
も対象となります。
ただし、すべての枠で自由に経費を組めるわけではありません。
革新的新製品・サービス枠では「機械装置・システム構築費」が必須です。
新事業進出枠とグローバル枠では「機械装置・システム構築費」または「建物費」のいずれかを必ず補助対象経費に含める必要があります。
また、既存の機械装置やシステムの単なる置き換えにかかる経費は補助対象外です。
申請するための主な要件

この補助金では、補助事業終了後3~5年間の事業計画を策定し、複数の基本要件を満たす必要があります。
1.付加価値額要件
補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、
付加価値額の年平均成長率4.0%以上
の増加を見込む事業計画を策定する必要があります。
付加価値額とは、
営業利益+人件費+減価償却費
です。
2.賃上げ要件
補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、
一人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上
増加させる必要があります。
設定した目標値は、交付申請時までに従業員または従業員代表者へ表明する必要があります。
この要件には補助金返還義務があります。
目標を従業員等へ表明していなかった場合は交付決定が取り消され、補助金全額の返還が求められます。
また、事業計画期間の最終年度に目標値を達成できなかった場合には、未達成率に応じた補助金の返還が求められます。
3.事業場内最低賃金要件
補助事業終了後3~5年の事業計画期間において毎年、
事業場内最低賃金を、補助事業実施場所の都道府県の地域別最低賃金より30円以上高い水準
とする必要があります。
この要件も、未達の場合には補助金返還義務があります。
4.ワークライフバランス要件
次世代育成支援対策推進法に基づく「一般事業主行動計画」を策定し、公表する必要があります。
応募申請時までに、申請締切日時点で有効な一般事業主行動計画を「両立支援のひろば」で公表している必要があります。
公募要領では、公表手続きには1~2週間程度かかるため、早めに準備するよう案内されています。
5.子育て等に関する職場環境整備
「子育て等に関する職場環境整備」に向けた取組を行う必要があります。
公募要領に定められた取組の中から1つを選び、実施する内容を応募申請時の事業計画に記載します。
なお、「プラチナくるみん認定」「くるみん認定」「トライくるみん認定」のいずれかを取得している事業者は、この要件が免除されます。
6.金融機関要件
補助事業を実施する際に金融機関等から資金提供を受ける場合は、その金融機関等から事業計画の確認を受ける必要があります。
その場合、「金融機関による確認書」の提出が必要です。
申請前に注意しておきたいこと
GビズIDプライムが必要
申請にはGビズIDプライムアカウントが必要です。
公募要領では、発行まで1週間程度かかるとされています。
取得が遅れても申請期限は延長されないため、未取得の場合は早めの手続きが必要です。
申請は電子申請のみ
申請は電子申請システムのみで受け付けられます。
また、申請内容を理解・確認したうえで、申請者自身が申請する必要があります。
外部支援者による代理申請は認められていません。
採択されても全額交付されるとは限らない
補助金交付候補者として採択された場合でも、申請したすべての経費が補助対象として認められるとは限りません。
採択後の交付申請で経費が精査され、補助対象外と判断された経費については、補助金額が減額されたり、全額対象外となったりする場合があります。
補助金で取得した財産には制限がある
補助金を利用して取得した財産については、原則として補助事業に使用する必要があります。
既存事業など、補助事業以外に使用した場合には、補助金の返還等が必要になる場合があります。
1回の公募につき1申請
同一事業者による応募は、1回の公募につき1申請に限られます。
複数の事業を計画している場合は、1つの事業計画書の中に複数の事業を記載して申請することは可能です。
どのような事業が対象になるのか
公募要領上、3つの枠は次のように整理できます。
新しい製品・サービスを開発する
→ 革新的新製品・サービス枠
自社の技術力等を活かし、顧客に新たな価値を提供する新製品・新サービスを開発する取組が対象です。
これまでとは異なる市場へ新事業で進出する
→ 新事業進出枠
自社にとって新しい製品・サービスを、新しい顧客市場に提供する取組が対象です。
新しい海外市場を開拓する
→ グローバル枠
自社製品等を活用して新しい海外販路を開拓するため、国内の製造等拠点を強化する取組が対象です。
どの枠を利用する場合でも、単なる設備購入ではなく、それぞれの枠で定められた事業内容・要件を満たす必要があります。
まとめ
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金には、
「革新的新製品・サービス枠」「新事業進出枠」「グローバル枠」
の3つがあります。
補助上限額は、申請する枠や従業員数によって異なり、通常枠で最大7,000万円、一定の賃上げ特例を適用する場合は最大9,000万円となります。
一方で、
- 付加価値額の増加
- 賃上げ
- 事業場内最低賃金
- 一般事業主行動計画
- 子育て等に関する職場環境整備
など、補助事業終了後も含めて満たすべき要件があります。
特に賃上げ要件や事業場内最低賃金要件については、未達の場合に補助金の返還を求められる場合があります。
補助金額だけでなく、事業計画期間中に継続して要件を満たせるかを確認したうえで申請することが重要です。
※本記事は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回・1.1版)」をもとに作成しています。
公募要領は必要に応じて改訂される場合があります。詳細は必ず最新の公募要領をご確認ください。
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